見ている前で、そのすべてを読まないうちにずたずたに引き裂いてしまった。
 「ばかな事をするじゃない。読んで見るとおもしろかったに」
 葉子を占領しきった自信を誇りがな微笑に見せながら倉地はこういった。
 「読むとせっかくの昼御飯がおいしくなくなりますもの」
 そういって葉子は胸《むな》くその悪いような顔つきをして見せた。二人はまたたわいなく笑った。
 報正新報社からのもあった。それを見ると倉地は、一時はもみ消しをしようと思ってわたり[#「わたり」に傍点]をつけたりしたのでこんなものが来ているのだがもう用はなくなったので見るには及ばないといって、今度は倉地が封のままに引き裂いてしまった。葉子はふと自分が木村の手紙を裂いた心持ちを倉地のそれにあてはめてみたりした。しかしその疑問もすぐ過ぎ去ってしまった。
 やがて郵船会社からあてられた江戸川紙《えどがわし》の大きな封書が現われ出た。倉地はちょっと眉《まゆ》に皺《しわ》をよせて少し躊躇《ちゅうちょ》したふうだったが、それを葉子の手に渡して葉子に開封させようとした。何の気なしにそれを受け取った葉子は魔がさしたようにはっ[#「はっ」に傍点]と思っ
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