しろがった。
「わたしが愛子の年ごろだったらこの人と心中《しんじゅう》ぐらいしているかもしれませんね。あんな心を持った人でも少し齢《とし》を取ると男はあなたみたいになっちまうのね」
「あなたとはなんだ」
「あなたみたいな悪党に」
「それはお門《かど》が違うだろう」
「違いませんとも……御同様にというほうがいいわ。私は心だけあなたに来て、からだはあの人にやるとほんとはよかったんだが……」
「ばか! おれは心なんぞに用はないわい」
「じゃ心のほうをあの人にやろうかしらん」
「そうしてくれ。お前にはいくつも心があるはずだから、ありったけくれてしまえ」
「でもかわいそうだからいちばん小さそうなのを一つだけあなたの分に残して置きましょうよ」
そういって二人《ふたり》は笑った。倉地は返事を出すほうに岡のその手紙を仕分《しわ》けた。葉子はそれを見て軽い好奇心がわくのを覚えた。
たくさんの中からは古藤のも出て来た。あて名は倉地だったけれども、その中からは木村から葉子に送られた分厚《ぶあつ》な手紙だけが封じられていた。それと同時な木村の手紙があとから二本まで現われ出た。葉子は倉地の
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