地を誘った。倉地は煙《けむ》ったい顔をしながら、それでもそのあとからついて来た。
部屋はさすがに葉子のものであるだけ、どことなく女性的な軟《やわ》らか味を持っていた。東向きの腰高窓《こしだかまど》には、もう冬といっていい十一月末の日が熱のない強い光を射《い》つけて、アメリカから買って帰った上等の香水をふりかけた匂《にお》い玉《だま》からかすかながらきわめて上品な芳芬《ほうふん》を静かに部屋の中にまき散らしていた。葉子はその匂い玉の下がっている壁ぎわの柱の下に、自分にあてがわれたきらびやか[#「きらびやか」に傍点]な縮緬《ちりめん》の座ぶとんを移して、それに倉地をすわらせておいて、違《ちが》い棚《だな》から郵便の束をいくつとなく取りおろして来た。
「さあけさは岩戸のすきから世の中をのぞいて見るのよ。それもおもしろいでしょう」
といいながら倉地に寄り添った。倉地は幾十通とある郵便物を見たばかりでいいかげんげんなり[#「げんなり」に傍点]した様子だったが、だんだんと興味を催して来たらしく、日の順に一つの束からほどき始めた。
いかにつまらない事務用の通信でも、交通|遮断《しゃだん》の孤
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