った。
 しかしこんな生活を倉地に長い間要求するのは無理だということを葉子はついに感づかねばならなかった。ある夕食の後《のち》倉地は二階の一|間《ま》で葉子を力強く膝《ひざ》の上に抱き取って、甘い私語《ささやき》を取りかわしていた時、葉子が情に激して倉地に与えた熱い接吻《せっぷん》の後にすぐ、倉地が思わず出たあくびをじっ[#「じっ」に傍点]とかみ殺したのをいち早く見て取ると、葉子はこの種の歓楽がすでに峠を越した事を知った。その夜は葉子には不幸な一夜だった。かろうじて築き上げた永遠の城塞《じょうさい》が、はかなくも瞬時の蜃気楼《しんきろう》のように見る見るくずれて行くのを感じて、倉地の胸に抱かれながらほとんど一夜を眠らずに通してしまった。
 それでも翌日になると葉子は快活になっていた。ことさら快活に振る舞おうとしていたには違いないけれども、葉子の倉地に対する溺愛《できあい》は葉子をしてほとんど自然に近い容易さをもってそれをさせるに充分だった。
 「きょうはわたしの部屋《へや》でおもしろい事して遊びましょう。いらっしゃいな」
 そういって少女が少女を誘うように牡牛《おうし》のように大きな倉
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