こうごう》などという葉子の敵を木村の一身におっかぶせて、それに女の心が企《たくら》み出す残虐な仕打ちのあらん限りをそそぎかけようとするのであった。
「あなたは丑《うし》の刻《こく》参りの藁《わら》人形よ」
こんな事をどうかした拍子《ひょうし》に面と向かって木村にいって、木村が怪訝《けげん》な顔でその意味をくみかねているのを見ると、葉子は自分にもわけのわからない涙を目にいっぱいためながらヒステリカルに笑い出すような事もあった。
木村を払い捨てる事によって、蛇《へび》が殻《から》を抜け出ると同じに、自分のすべての過去を葬ってしまうことができるようにも思いなしてみた。
葉子はまた事務長に、どれほど木村が自分の思うままになっているかを見せつけようとする誘惑も感じていた。事務長の目の前ではずいぶん乱暴な事を木村にいったりさせたりした。時には事務長のほうが見兼ねて二人《ふたり》の間をなだめにかかる事さえあるくらいだった。
ある時木村の来ている葉子の部屋に事務長が来合わせた事があった。葉子は枕《まくら》もとの椅子《いす》に木村を腰かけさせて、東京を発《た》った時の様子をくわしく話して聞かせ
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