ている所だったが、事務長を見るといきなり[#「いきなり」に傍点]様子をかえて、さもさも木村を疎《うと》んじたふうで、
 「あなたは向こうにいらしってちょうだい」
 と木村を向こうのソファに行くように目でさしずして、事務長をその跡《あと》にすわらせた。
 「さ、あなたこちらへ」
 といって仰向けに寝たまま上目をつかって見やりながら、
 「いいお天気のようですことね。……あの時々ごーっ[#「ごーっ」に傍点]と雷のような音のするのは何?……わたしうるさい」
 「トロですよ」
 「そう……お客様がたんとおありですってね」
 「さあ少しは知っとるものがあるもんだで」
 「ゆうベもその美しいお客がいらしったの? とうとうお話にお見えにならなかったのね」
 木村を前に置きながら、この無謀とさえ見える言葉を遠慮|会釈《えしゃく》もなくいい出すのには、さすがの事務長もぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]としたらしく、返事もろくろくしないで木村のほうに向いて、
 「どうですマッキンレーは。驚いた事が持ち上がりおったもんですね」
 と話題を転じようとした。この船の航海中シヤトルに近くなったある日、当時の大統領マッキ
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