ろく物もいえなくなる。ところが葉子さんの前では全く異《ちが》った感じで物がいえる。これは考えものだ」
「葉子さんという人は兄がいうとおりに優《すぐ》れた天賦《てんぷ》を持った人のようにも実際思える。しかしあの人はどこか片輪《かたわ》じゃないかい」
「明白にいうと僕はああいう人はいちばんきらいだけれども、同時にまたいちばんひきつけられる、僕はこの矛盾を解きほごしてみたくってたまらない。僕の単純を許してくれたまえ。葉子さんは今までのどこかで道を間違えたのじゃないかしらん。けれどもそれにしてはあまり平気だね」
「神は悪魔に何一つ与えなかったが Attraction だけは与えたのだ。こんな事も思う。……葉子さんの Attraction はどこから来るんだろう。失敬失敬。僕は乱暴をいいすぎてるようだ」
「時々は憎むべき人間だと思うが、時々はなんだかかわいそうでたまらなくなる時がある。葉子さんがここを読んだら、おそらく唾《つば》でも吐きかけたくなるだろう。あの人はかわいそうな人のくせに、かわいそうがられるのがきらいらしいから」
「僕には結局葉子さんが何がなんだかちっとも[#「ちっとも」
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