上にがば[#「がば」に傍点]と伏さってしまった。
戸があいた。
「戸があいた」、葉子は自分自身に救いを求めるように、こう心の中でうめいた。そして息気《いき》もとまるほど身内がしゃちこ[#「しゃちこ」に傍点]ばってしまっていた。
「早月《さつき》さん、木村さんが見えましたよ」
事務長の声だ。あゝ事務長の声だ。事務長の声だ。葉子は身を震わせて壁のほうに顔を向けた。……事務長の声だ……。
「葉子さん」
木村の声だ。今度は感情に震えた木村の声が聞こえて来た。葉子は気が狂いそうだった。とにかく二人《ふたり》の顔を見る事はどうしてもできない。葉子は二人に背《うし》ろを向けますます壁のほうにもがきよりながら、涙の暇から狂人のように叫んだ。たちまち高くたちまち低いその震え声は笑っているようにさえ聞こえた。
「出て……お二人ともどうか出て……この部屋を……後生《ごしょう》ですから今この部屋を……出てくださいまし……」
木村はひどく不安げに葉子によりそってその肩に手をかけた。木村の手を感ずると恐怖と嫌悪《けんお》とのために身をちぢめて壁にしがみついた。
「痛い……いけません……お腹《なか
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