顔を伏せて、ほんとうに自分のためにさめざめと泣き続けた。
こうして小半時《こはんとき》もたった時、船は桟橋につながれたと見えて、二度目の汽笛が鳴りはためいた。葉子は物懶《ものう》げに頭をもたげて見た。ハンケチは涙のためにしぼるほどぬれて丸まっていた。水夫らが繋《つな》ぎ綱《づな》を受けたりやったりする音と、鋲釘《びょうくぎ》を打ちつけた靴《くつ》で甲板《かんぱん》を歩き回る音とが入り乱れて、頭の上はさながら火事場のような騒ぎだった。泣いて泣いて泣き尽くした子供のようなぼんやりした取りとめのない心持ちで、葉子は何を思うともなくそれを聞いていた。
と突然戸外で事務長の、
「ここがお部屋《へや》です」
という声がした。それがまるで雷か何かのように恐ろしく聞こえた。葉子は思わずぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]となった。準備をしておくつもりでいながらなんの準備もできていない事も思った。今の心持ちは平気で木村に会える心持ちではなかった。おろおろしながら立ちは上がったが、立ち上がってもどうする事もできないのだと思うと、追いつめられた罪人のように、頭の毛を両手で押えて、髪の毛をむしりながら、寝台の
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