の上にある葉巻をつまんだ。
葉子は笑うよりも腹だたしく、腹だたしいよりも泣きたいくらいになっていた。口びるをぶるぶると震わしながら涙でもたまったように輝く目は剣《けん》を持って、恨みをこめて事務長を見入ったが、事務長は無頓着《むとんじゃく》に下を向いたまま、一心に葉巻に火をつけている。葉子は胸に抑《おさ》えあまる恨みつらみをいい出すには、心があまりに震えて喉《のど》がかわききっているので、下くちびるをかみしめたまま黙っていた。
倉地はそれを感づいているのだのにと葉子は置きざりにされたようなやり所のないさびしさを感じていた。
ボーイがシャンペンとコップとを持ってはいって来た。そして丁寧にそれを事務テーブルの上に置いて、さっきのように意味ありげな微笑をもらしながら、そっ[#「そっ」に傍点]と葉子をぬすみ見た。待ち構えていた葉子の目はしかしボーイを笑わしてはおかなかった。ボーイはぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]として飛んでもない事をしたというふうに、すぐ慎み深い給仕《きゅうじ》らしく、そこそこに部屋《へや》を出て行った。
事務長は葉巻の煙に顔をしかめながら、シャンペンをついで盆を葉子のほ
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