ように、仮睡に陥ろうとした。そうしてははっ[#「はっ」に傍点]と何かに驚かされたように目を開くと、また底の知れぬ哀感がどこからともなく襲い入った。悲しい快さ。葉子は小学校に通《かよ》っている時分でも、泣きたい時には、人前では歯をくいしばっていて、人のいない所まで行って隠れて泣いた。涙を人に見せるというのは卑しい事にしか思えなかった。乞食《こじき》が哀れみを求めたり、老人が愚痴をいうのと同様に、葉子にはけがらわしく思えていた。しかしその夜に限っては、葉子はだれの前でも素直《すなお》な心で泣けるような気がした。だれかの前でさめざめと泣いてみたいような気分にさえなっていた。しみじみとあわれんでくれる人もありそうに思えた。そうした気持ちで葉子は小娘のようにたわいもなく泣きつづけていた。
その時|甲板《かんぱん》のかなたから靴《くつ》の音が聞こえて来た。二人《ふたり》らしい足音だった。その瞬間まではだれの胸にでも抱きついてしみじみ泣けると思っていた葉子は、その音を聞きつけるとはっ[#「はっ」に傍点]というまもなく、張りつめたいつものような心になってしまって、大急ぎで涙を押しぬぐいながら、踵《く
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