に集まって、背は思わずも激しく波打った。そのあとはもう夢のようだった。
しばらくしてから葉子は力が抜けたようになって、ハンカチで口もとをぬぐいながら、たよりなくあたりを見回した。甲板《かんぱん》の上も波の上のように荒涼として人気《ひとけ》がなかった。明るく灯《ひ》の光のもれていた眼窓《めまど》は残らずカーテンでおおわれて暗くなっていた。右にも左にも人はいない。そう思った心のゆるみにつけ込んだのか、胸の苦しみはまた急によせ返して来た。葉子はもう一度|手欄《てすり》に乗り出してほろほろと熱い涙をこぼした。たとえば高くつるした大石を切って落としたように、過去というものが大きな一つの暗い悲しみとなって胸を打った。物心を覚えてから二十五の今日《こんにち》まで、張りつめ通した心の糸が、今こそ思い存分ゆるんだかと思われるその悲しい快《こころよ》さ。葉子はそのむなしい哀感にひたりながら、重ねた両手の上に額を乗せて手欄《てすり》によりかかったまま重い呼吸をしながらほろほろと泣き続けた。一時性貧血を起こした額は死人のように冷えきって、泣きながらも葉子はどうかするとふっ[#「ふっ」に傍点]と引き入れられる
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