しな》びた乳房を弄《なぶ》らしてゐた。
「其の子が一番福造に似てよるな。」と、源太郎は重苦しさうな物の言ひやうをして、つく/″\と姉の膝の上の子供を見てゐた。
「性根まで似てよるとお仕舞ひや。」
 笑ひながらお梶は、萎びた乳房を握つてゐる小さな手を窃《そつ》と引き離して襟《えり》をかき合はした。孫は漸く祖母の膝を離れて、気になる風で大叔父の方を見ながら、細い眼尻の下つた平ツたい色白の顔を振り/\、ヨチ/\と濡れ縁の方に歩いた。
「男やと心配やが、女やよつて、まア安心だす。」
 戦場のやうに店の忙しい中を、お文は銀場から背後を振り返つて、厭味《いやみ》らしく言つた。
 それを耳にもかけぬ風で、お梶は弟の前の煙管《きせる》を取り上げて、一服すはうとしたが、煙管の詰まつてゐるのに顔を顰《しか》めて、
「をツ[#「をツ」に傍点]さん、また詰まつてるな。素人《しろと》の煙草呑みはこれやさかいな。」と、俯いて紙捻《こより》を拵へ、丁寧に煙管の掃除を始めた。
「福造から手紙が来たある。……一寸読んで見なはれ。」と、源太郎は厚い封書を姉の前に押しやつた。
「それ、福造の手紙かいな……私《わし》はよツぽ
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