ろ/\してゐる陶工とちがつて、皆精神力がしつかりしてゐて何物かを胸中に包藏してゐたからである。が、概して一般の趣向は※[#「※」は「「滔」でつくりの上が「刀」」、52−2]々として似而非風流の歪めるものを美くしいものと思ひ誤つてしまつた。[#底本では「。」が欠如]
この「不自然に歪めるもの」さへはつきり見極めることが出來れば先づ危險信號の標識がわかるわけである。しかし月並の根ざすところは長い歴史をもつてゐるだけに實に深い。この雜草の根を拔いてしまはない限り、惡趣味なゆがみが顏を出してくる。恰も今日、床屋誹諧、點取誹諧が猶おもしろがられてゐる如きである。
故意にゆがめられたる燒物の顏は、一瞥してわからねばならぬ。そこに早くすゝみたい。
[#改頁]
殘念物
器物は疵のないに如くことはない。茶道では小さな疵でも神經を尖らせて氣にする、もつともなことである。少しでもニユウ、ホツレがあるのを氣にする、これは完器に越したことはないといふ一面、疵物を御客に出しては相すまないわけである。また御客に器物を賞玩してもらう上からいつても疵があれば夫れだけ御客に不安な餘計な心づかひをさせる、一
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