知り土の味はひをしる。大切なことだ。
 今、手法といふことをいつたが、朝鮮の手法が日本に入れられたことは既にいつた。同じ高臺のつくり方でも朝鮮の高臺削りが九州の窯々にひどく影響してゐる、肥前の土燒類など最も顯著である、長州の萩にも丹波の古いところにも朝鮮の系統が流れてゐる。これは多くの器物について高臺をよく見てゆけば自づから會得することが出來る。瀬戸系統の古窯から出土する極めて古い時代の破片に、支那宋代の高臺をみるが如き感を與へらるゝものが多い如き。
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   歪

 不の字と正の字をくツつけて「ゆがむ」といふ字になる。
 やきものは正しい形を造つても乾かすうちに歪みがくる、素燒で又狂ひがくる、藥をかけて燒きあげると又多少の歪みが出る。大さに於てロクロで挽いた時より約二割方小さくなつてくる。若し共に燒く他の器のため押されたり、火の強弱變化のために、窯の中でも歪んだり、いびつ[#「いびつ」に傍点]になつたり、凹んだり、はぢけたりする。これを自然のゆがみといひたい。
 昔の人は、この自然のゆがみが一種の景色をつくり風情を添へることに興をもつて、さま/″\な銘をつけたり、因縁をつけ
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