つてゐたにちがひない、その夢に近い燒物を造るに適した土を探し求めるといふことが一番大切であつたらう、さうして自分の狙つてゐる釉藥がぴつたり土と合つてくれるかどうか、陶人達は窯場をこしらへるために、土を求め、水の流れを探し、燃料の樹木を考へて、總べての條件がどうにか調子がとれるところに始めて行李を下す。それから窯が開けてゆく――が、しかし一概に之れだけで片付けられない。今日では交通の便が開けてゐるから自分の欲する土を欲する場所に運ばせることが出來るが、昔はそれが出來なかつたゝめ、多く土味に依つて概略の地方の分け方は出來ると考へられてゐた。又實際さうであつた。しかし大名といふ權力者がゐて、これが舟などを利用し自分の勢力圈内の土は移動させるのは無論、又他藩へ工人をしのばせたり、他藩の土をわけてもらつたりして、造つてゐるものがないでもなかつた。だから、一概に土が定まれば其土地の産としていゝといふ事を斷言して了ふわけにはゆかないが、まづ大あらまし土を知ることが出來、ついで釉藥がわかりまた手法の變り目がわかつてくると、一個の燒物の誕生がはつきりして面白くなつてくる。
【手法】
 土味といふ――土を
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