無限の愛著を感じ、手で捧げて以て無上敬親の念を生ずる。これ燒物を玩讀するの必要條件である。「手を觸る可からず」ではない、「大いに手を觸る可し」であらねばならぬ。
土味
青磁でも宋代の青磁には胎土を見せたものが多い。また全然胎土を見せないものも多く燒かれてゐる。支那宋代に出來た陶は明時代の磁(染付赤繪)[#括弧内は「染付」と「赤繪」の二行になっている]を別にして、支那やきもの界の最も藝術的な又現代日本人の性質にぴつたりくるものゝ出來た時代である。作風颯爽としてゐる、さうして土味を實によく見せてくれてゐる。心憎いばかりうまい。
朝鮮、日本、各種各樣の燒物も亦土味を多分にみせてゐる。朝鮮とても南方と北方と中央との土味がちがひ、日本でも無論國々によつて、窯々によつて土味がちがふ。この土味といふことは地方色を味ひわけるに一番動きのない標準である。
土の味ひといふ――一寸むづかしい。が、先づ土を知るといふことが大切だ。その昔陶人は袋を肩にして國々山々丘々の土を漁り歩いたであらう、袋に拾ひ込んだ土を水に漬したり燒いてみたり、さま/\の苦心を重ねたであらう。陶人はそれ/″\一つの夢をも
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