だけ常人とちがつた特異な性質をもつてゐる人が多い。感情もはげしいかもしれない、又偏狹であるとか、頑固だとか、約束を無視するとか、常人に批評を許せばいろ/\なことをいふ。だから知つて非常に惡くなる場合もあれば又知つてから非常に良くなる場合もある。こゝがむづかしいことで、作品以外に人間と人間との交渉が直接になつてくるだけすべて厄介である。作家と鑑賞しやうといふ人との間が、うまくゆけば双方の間が非常な熱情で結ばれていゝが、惡くなつた場合には反撥の度がひどい。それだけ器物以外に生きた人間に接するから、考へやうでは面白いが、場合に依つてはおもしろくない。
 そこにゆくと古い器物は安全である。作家といふものは過去の中にあるから、現實的に接するのは器物ばかりである。個人作家のことを知つてゐても「あの作者は頑固爺だつたさうだ」とか「まるで狂人あつかひされてゐたさうだ」とか總べて作家の性癖が「さうだ」の幕を越して見ることになり、却つておもしろ味さへ添へらるゝ場合がある。故に古い器物に對して鑑賞する態度が、新らしいものよりも冷靜である。冷靜に鑑賞して器物そのものを良しとし惡しとすることが出來る。この氣樂に
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