おいでになったような方で歩き方も、いま時の御婦人には珍しい純粋な内股で、いつもお履物が、すぐに内側が擦り減ってかなわない、とおっしゃっておいでになったのを、思い出したからでございます。私は思わずゾッとなって、このことは口に出すまいと決心いたしました。
――さて、庭に面した書斎の窓の、親指ほどの太さの鉄棒は、皆で三本抜かれておりましたが、それは三本ともほとんど人間ばなれした激しい力で押し曲げられて、窓枠の※[#「※」は「木+内」、第3水準1−85−54、359−13]《ほぞ》から外されたと見え、それぞれ少しずつ中ほどから曲がったまま軒下に捨ててあるのを見ました時に、私は思わずふるえあがってしまいました。
――ところで、今度は旦那様の御|遺骸《いがい》でございますが、これはまことにむごたらしいお姿で、なんでも頭の骨が砕かれたため、脳震盪《のうしんとう》とかを起こされたのが御死因で、もうひとつひどいことには、お頸《くび》の骨がへシ折られていたのでございます。この他には別にお傷はございませんでしたが、けれどもその固く握りしめられた右掌の中から、ナンとも奇妙な恐ろしいものがみつけ出されたので
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