うに昂然と気どって、
「いや、それだよ……実は、白状するが、今夜から俺は、監視船に乗って、釧路丸を捜す探偵の仲間入りをするんだ」
「なんだって? お前が監視船に……」
「うン、頼まれたんだ」と丸辰は勿体ぶって、「実は、さっきに警察から、俺んとこへ依頼が来たんだ。それで、東屋《あずまや》って人に会って来たんだがな。その人は、内地の水産試験所の所長さんだそうだが、恰度根室へ鱈《たら》漁場の視察に来ていて、今度の事件を聞き込むと、なんか目論見でもあるのか、とても乗気になって、一役買って出たんだそうだ。それで、今夜オホツクから廻されて来る監視船に、乗り込むんだが、それについて、なんでも船乗りの顔に詳しい男が欲しいってわけで、この丸辰が呼ばれたんだ」
「へえー? そりゃ又、えらい出世をしたもんだな」
「うん。しかし、あの東屋って人に、果して釧路丸をつかませても、鯨の祟りが判るかどうかはアテにならんよ。俺も、監視船に乗込むんだから、この仕事には、大いに張合があるわけさ……そうだ、もうそろそろ、乗込みの仕度をしとかんならん。親爺、酒だ。酒を持って来てくれ!」
妙に、鼻息が荒くなって来た。
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