たということになって、半年ほど前に、すごすご帰って来たんです」
「ふむ、それで……」
「……それで、大変朗かな娘さんでしたが、それからはガラッと人間が変ったようになりました……そんなふうですから、自然と父親の風間さんからも、なにかにつけて、いつも白い眼で見られていたようです。……全く、考えてみれば、気の毒です……」
そう言って三田村技手は、思わず自分の軽口を悔むような、いやな顔をして両手を揉《も》み合わせた。けれども、いままでじっと聞いていた東屋氏は、やがて暗い顔を上げると、呟《つぶや》くように言った。
「……ぼくは、あの暴れ石のからくりを弄《ろう》したものが、なんだかわかりかけてきたようだ」
「いったいそれはだれです! 娘さんですか、それとも……」
「もちろんそれは、娘のミドリさんだよ」
とそれから東屋氏は、そばの椅子へしずかに腰を下ろし、両膝《りょうひざ》に両肘《りょうひじ》をのせて指を前に組み合せ、ためらうように首を捻《ひね》りながら、ボツリボツリと切り出した。
「……これは、どうも少し、臆測《おくそく》に過ぎるかもしれない……けれども、どうしてもぼくの想像は、こんなふうにば
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