ねて尋ねた。
「なにてのひら……うん、小使にも細君にも、胼胝《たこ》などは出来ていなかったよ」
「じゃあ、やっぱり妖怪の……」
「いや、まあ待ちたまえ……ぼくはそれから、そのお隣の風間さんの官舎へ、ちょっと失礼して上らしてもらったんだ、もちろん娘さんに逢《あ》うつもりでね……そしてそこで、大発見をした!」
「大発見? じゃあ、寝ている娘のミドリさんのてのひらに胼胝でもあったんですか?」
「いいや、違う。それどころじゃあない」
「すると娘さんの身に、何か異変でも?」
「冗談じゃあないよ。ぼくはてんから[#「てんから」に傍点]娘さんなど見はしない。彼女は、どこの部屋にもいやしなかった」
「ミドリさんがいなかったですって!?[#「!?」は第3水準1−8−78、117−3]」
三田村技手が聞きとがめた。すると東屋氏は、うす暗い蝋燭《ろうそく》の灯に、大きな自分の影法師をニュッとのめら[#「のめら」に傍点]しながら、
「うん、そのかわり、さっき老人がここで見たという……あの赤いグニャグニャの幽霊に出会ったよ!」
五
やがて東屋氏は、驚いているわたしを尻目《しりめ》にかけ、三
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