太い綱の一方の端をあの塔の頂きのランプ室から、玻璃窓の下の小さな通風孔をとおして、外の高い岩の上へたれておく。それから下へ降りて来て岩の上で例の岩片《いし》をたれている太い綱の端でしばっておいてふたたび塔上へ登る。そしてランプ室においてあるほうの綱の端を、旋回機の蓋《ふた》をあけて、円筒内の頂きへほとんど一杯に上っている分銅の把手《とって》へ、かたわな[#「かたわな」に傍点、底本では誤って「かたわ」に傍点]結びというかひっとき[#「ひっとき」に傍点]結びというか、とにかくそれで縛りつけ、そのちょっと引っ張ると解けるひっとき[#「ひっとき」に傍点]結びの短い一端へ、この細紐をこのとおりに結びつけて、さて旋回機のウィンチに捲きついているロープを、そうだ、あの手斧《ておの》で叩ッ切る。すると……」
「ああつまり釣瓶《つるべ》みたいだ」
とわたしは思わず口を入れた。
「百貫近いその分銅のすさまじい重力を利用して、大石を暴れ込ましたというんですね。だが、そうすると、玻璃窓や機械のこわれる音とほとんど同時に、分銅の地響きがしなければなりませんが」
「もちろんその点も考えたよ」と東屋氏もつづける。
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