、三田村さん。あの回転ランプの重量《めかた》は、どれぐらいあります?」
「さあ、一トンはあるでしょう」
「一トン……一トンというと二百六十六貫強ですね。じゃああのランプをグルグル廻しながら、三十六メートルの円筒内を下って来る、あの原動力の重錘《おもり》というか分銅は、随分重いでしょうね?」
「そうですね、八十貫は充分ありましょう……大きな石臼《いしうす》みたいですよ……そいつがジリジリ下まで降り切ってしまうと、また捲《ま》き上げるんです」
「なるほど、最近捲き上げたのはいつですか?」
「昨日の午後です」
「じゃあ今夜は、分銅はまだ塔の上のほうにあったわけですね?」
「そうです」
「いやどうも有難う。あ、それから、この無電室でちょっと一服やらしてもらいますよ」
 そう言って東屋氏は、わたしを引っ張って無電室へ入ると、ドアをしめて、
「さあきみ、少しずつわかって来たぞ。まずはぼくの組み立てた仮説を聞いてくれたまえ」

       四

 東屋氏はそばの椅子《いす》に腰をおろすと、一服つけながら、話し始めた。
「まず、化け物にせよ人間にせよ、とにかくあの不敵な狼藉者《ろうぜきもの》が、この
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