「妙なものですね」
 とわれながら妙な声を出した。すると今までずッとわたしの奇妙な収穫物をみつめていた東屋氏は、
「……こいつア面白くなってきた。ねきみ、これが考えられずにいられるものか!」
 そう言ってわたしからその綱を取り上げると、
「何に使ったものか、聞いてみよう」
 と歩きだした。
 構内へ戻ると、ちょうど倉庫の前で三田村技手が、針金の束を引っ張り出してしきりになにかやっている。東屋氏は早速始めた。
「この綱は灯台のでしょう?」
「そうです。倉庫にいくらも入れてあるやつです。おや、こんな紐のついたのは……はて、どこから拾ってこられたんですか?」
 けれども東屋氏は答えようともしないで、しきりに暗《やみ》の空をふり仰いでいたが、やがて突飛もないことを訊《き》きだした。
「この灯台の高さは、ランプ室の床《ゆか》までで三十メートルでしたね。じゃあきみ、この綱の長さを計って下さい」
 三田村技手は、手もとの巻尺ではかり始めた。
「……綱も紐も、両方とも二十六メートルずつあります」
「なに二十六メートル?……待アてよ?」
 とまたしばらく闇空《やみぞら》を睨《にら》めていたが、
「ね
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