いし、どうだい、こうしている間に、ちょっとこの下のしぶき[#「しぶき」に傍点]のかかりそうな波打ち際を散歩してみないかい」
というわけで、やがてわたし達は、灯台の根元の波打ち際へ降り立った。
そこでは、闇の外洋から吹き寄せる身を切るような風が、磯波《いそなみ》の飛沫《ひまつ》とガスをいやというほどわたし達に浴びせかけた。けれどもすぐにわたし達は、塔の根元の一番|烈《はげ》しい波打ち際の一段高くそびえた岩の上で、おなじような岩片《いし》が飛沫にぬれていくつも転がっているのを、ほとんど手さぐりで発見した。
ところがはからずもわたしは、おなじ岩の上で、わたしの足元から、岩の裂け目をクネクネと伝わって、一本の太い綱が、波打ち際から海の中へ浸《ひた》っているらしいのを、拾い上げた。はてな? と思って引っ張って見ると、ずるずると出てくる。いい気になって手繰《たぐ》りよせる。なかなか長い。やがてその先端がきたかと思うと、妙なことに、そこにはまた別の、今度はずっと細い紐《ひも》の先がしっかり撚《よ》りつけてある。引っ張る。ところがこれがまたおなじようになかなか長い。やっと全部手繰り終ったわたしは
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