めてしげしげと友田看守の死体を眺め始めた。が、間もなく死人の頭の右耳の上に、この手斧でなぐりつけたらしい新しい致命傷をみつけて立ち上った。
「これアきみ、傷口の血のかたまり工合から見ても、この傷のほうが、先に加えられたほんとうの致命傷らしいね……すると、あの石の飛び込んだときには、もう友田看守は死んでいたんだ……だが、そうすると、あの石の飛び込んだ音の後から聞いたという呻《うめ》き声は、死人のものなどではないことになる……これアだいぶん事情が違ってきた」
「じゃあやっぱりあれも、幽霊の唸《うな》り声?」
 とわたしは思わず声を出した。
 けれども東屋氏は、それには答えないでしきりに苦吟しつづけていたが、やがて語調をあらためて言った。
「ねえきみ……ぼくはまず、なんと言っても、この奇怪な暴れ石の出所のほうが先決問題だと思うよ……ね、この岩片《いし》には、この辺の海岸にはいくらでもいるフジツボやアマガイのような岩礁《がんしょう》生物が、少しもついていないところをみると、どうしてもこいつは、満潮線以下にあったものではないね。といっても、このしめり工合《ぐあい》じゃあ、まさか山の中のものじゃな
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