も、とにかくなんとかしなければなりませんので、しばらく迷ったあげく、三田村君と小使に、とりあえず試験所へご後援を願いに向わせたんです」
「いやそうですか。一向お役にも立ちませんが」と東屋氏が、われに帰ったように言った。「じゃあとにかく、こうしてもいられませんから……そうだ、風間さん、あなたは、現場の証拠品に手をつけないようにして、早速予備灯の支度をなさってはいかがですか。海は、真っ暗ですよ。……それから三田村さんは、アンテナを修繕して、少しも早く通信を始めて下さい。わたし達もお手伝いしましょう」
 そこで二人はしばらく戸惑うようにしていたが、やがて波の音にせき[#「せき」に傍点]立てられるように、そわそわと降りて行った。そしてわたし達は、それぞれにはげしい興奮を押えながら、あらためて取り散らされた室内を呆然《ぼうぜん》と見廻すのだった。
 ところがここで、はからずもわたしは重大な発見をした。それは一丁のなまくらな手斧《ておの》を、室内のうす暗い片隅から拾い上げたのだ。しかもそのにぶい刃先には、なんと赤黒い血がこびりついていた。
 この発見で顔色を変えた東屋氏は、早速かがみ込んで、あらた
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