躍り込んだわたし達は、とうとうそこでほんとうに化け物の狼籍《ろうぜき》の跡を見たのだった。
円筒形にランプ室の周囲を取り巻いた大きなガラス窓の、暗黒の外海に面したほうには、大きな穴があき、蜘蛛《くも》の巣のようなひびが八方にひろがり、その穴から冷たい海風がサッとガスを吹き込むと、危なげな蝋燭の火がジジッと焦立《いらだ》つ。うす暗いその光に照らされて、小さな円い室《へや》の中央にドッシリと据えられた、大きなフレネル・レンズのはまった三角筒の大ランプは、その一部に大破損を来し、暗黒のその火口からは、石油ガスが漏れているらしく、シューシューとかすかな音を立てていた。そしてその大きなカップ状の水銀槽にささえ浮《うか》められた大ランプの台枠《だいわく》の縁《ふち》には、回転式灯台特有の大きな歯車が仕掛けてあるのだが、その歯車に連なる精巧な旋回装置は無残にも粉砕されて、ランプの回転動力なる重錘《おもり》を、塔の中心の空洞につるしているはずのロープは、もろくも叩《たた》き切られていた。
けれども何にもまして無惨で思わずわたし達の眼をそむけさしたのは、破壊された旋回機のかたわらに、口から血を吐き、
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