ひ》けると早速青山喬介を訪ねて行った。
「あの事件は、もう解決済みじゃなかったかね」
 そう云って喬介は、無愛想に雄太郎君へ椅子を勧めた。けれどもやがて雄太郎君が、自分が証人として見聞した事実や、蜂須賀巡査の発見した新しい犯人否定説や、石塀の前の妙な出来事や、それからまた自分の証人としての困難な立場などを細々《こまごま》と打明けると、青山喬介はだんだん乗り出して、話の途中で二三の質問をしたり、眼をつむって考えたりしていたがやがて立上ると、
「よく判りました。力になりましょう。だが、その蜂須賀君とやらの云う通り、犯人は秋森家の双生児《ふたご》じゃあないね。……誰と誰が犯人かって? そいつは明日の晩まで待って呉れ給え」


          五

 翌日一日が雄太郎君にとってどんなに永かったことか云うまでもない。時計の針の動きがむしょう[#「むしょう」に傍点]にもどかしく、矢も楯も堪え切れなくなった雄太郎君は、やがて日が暮れて夕食を済ますとそそくさと飛び出して行った。
 青山喬介は安楽椅子に腰かけて雄太郎君を待兼ねていた。「今日、蜂須賀巡査と云うのに会って来たが、なかなか間に合いそうな男
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