だね」喬介が云った。「この事件で、あの男の昇給は間違いなしだよ」
「じゃあもう、真犯人が判ったんですか?」
「勿論さ。昨晩君の話を聞いた時から、もう僕には大体判っていた。……なにも驚くことはないよ。ね、君。事情は大変簡単じゃあないか。……つまり、あの一本道で、君と郵便屋が、こちらから二人の犯人を追って行く。差配人が向うから来る。ところが犯人がいない。そこで、たったひとつの抜道である秋森家の勝手口を覗きこむ。すると、犯人の足跡がある。ところがだ。その足跡が、犯行よりずっと後からつけられたものであった、としたなら、一体どうなるかね?……」
「……犯人が、その時、勝手口から這入らなかったことになりますが……」
「そうだよ。そして、塀の外には、君達三人の男がいたんだ。……判るだろう?」
「……判るようで……判りません……」
「じれったいね……その塀の外に、犯人がいたんだよ……つまり、君達三人の中に、犯人がいたんだ!」
 ――冗談じゃあない! 雄太郎君は思わず声を上げようとした。が、喬介は押かぶせるように、
「君達三人の中で、犯行後チンドン屋が勝手口へビラを投げ込んで通りかかった時から、そのチン
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