石塀幽霊
大阪圭吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)秋森《あきもり》家
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六|間《けん》道路
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》
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一
秋森《あきもり》家というのは、吉田雄太郎《よしだゆうたろう》君のいるN町のアパートのすぐ西隣にある相当に宏《ひろ》い南向きの屋敷であるが、それは随分と古めかしいもので処まんだらにウメノキゴケの生えた灰色の甍《いらか》は、アパートのどの窓からも殆んど覗《うかが》う事の出来ない程に鬱蒼たる櫟《くぬぎ》や赤樫《あかがし》の雑木林にむっちりと包まれ、そしてその古屋敷の周囲は、ここばかりは今年の冬に新しく改修されたたっぷり[#「たっぷり」に傍点]一丈はあろうと思われる高い頑丈な石塀にケバケバしくとりまかれていた。屋敷の表はアパートの前を東西に通ずる閑静な六|間《けん》道路を隔てて約三百坪程の東西
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