に立会って貰うと、庭下駄の跡に踏みつけられた広告ビラの前へ屈み込んで、もう一度改めて考えはじめた。
――「カフェー・ルパン」の広告ビラ。これは確かにあのチンドン屋の撒き捨てていったものに違いない。すると、この広告ビラが先に投げ込まれたのか? それとも二人の犯人が先にここを通ったのか?……けれども目前の事実はビラが先に投げ込まれて、その後から二人の犯人が出て来て、庭下駄で知らずにビラを踏みつけた、としか解釈出来ない。そうだ。この事実に間違いはない。すると……すると、チンドン屋は、犯人がこの小門を出て行く前に、つまり惨劇の起きるより先に、この門前を通ったことになる……それでいいか? それでいいのか?……駄目駄目。チンドン屋は、事件の後から通った筈だ。……まるで理窟になっとらん!
蜂須賀巡査は苛立たしげに立上った。
――そうだ。兎に角、一度チンドン屋に当ってみよう。そしてあのチンドン屋が、ひょっと犯行の前にも此処を通ったかどうか? まずあり得ない筈だが、念のために確かめてみよう。
そこで蜂須賀巡査は秋森家を出て、石塀沿いに東の方へ歩きだした。
――若《も》しも、思った通りチンドン屋
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