《ひろし》に実《みのる》、年齢《とし》は二人とも二十八歳。――明かに双生児《ふたご》だ。
 一瞬、人々の間には気|不味《まず》い沈黙が漲《みなぎ》った。が、すぐに郵便屋が、堪えかねたように顫える声で叫んだ。
「こ、この人達に、違いありません」
 そこで司法主任は、一段と厳重な追求をはじめた。ところが秋森家の双生児《ふたご》は、二人ともつい今しがたまで裏庭の藤棚の下で午睡《ひるね》をしていたので、なにがなんだかサッパリ判らんと答え、犯行に関しては頭から否定した。前庭などへ出たこともない、とさえ云った。
 そこで二人の女中が改めて呼び出された。ところがナツと呼ぶ歳上のほうの女中は、老主人の係りで殆んど奥の離れにばかりいたから、母屋のことは少しも判らないと答え、キミと呼ぶ若いほうの女中は、二人の若旦那が藤棚の下で午睡《ひるね》をしていられたのは確かだが、実は自分もそれから一時間程|午睡《ひるね》した事、尚事件の起きあがる少し前頃に何処からか電話がかかって来て、家政婦のそめ子が留守を頼んで出て行ったが、何分夢うつつでボンヤリ寝過してしまい申訳もありませんと答えた。
 このように女中の証言によっ
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