ことの得意でない伝さんは、いつまでたっても、この問題に解決を与えられそうな、名案を、考え出すことは出来なかった。
そうして、いつの間にか、一月二月と時間が流れて行った。しかもその間、例の三の字気狂いの婦人客は、殆んど毎日のように三時の急行の三等車の三輛目でやって来て、相変らず出迎男を従えて、改札口のほうへ出て行った。考えてみれば、どうもこれは容易なことではない。もういままでに、一日一人で、百人近くのいろいろな婦人達が、気狂いじみたやりかたで上京しているのだ。それも、そもそも伝さんがその事に気づいてからの、大体の計算であって、この奇妙な旅行者達が、まだ伝さんの気づかなかった先からこのようなことを続けていたのだとしたなら、いったい何百人の気狂いが、同じように奇怪な方法をとって上京しているのか、判らない。伝さんは、なんだか恐ろしくなって来た。三という数字に関したものを、思っても見ても考えても、ヘンに気持が苛立《いらだ》って来て、そろそろ一人でこのことを包み隠している負担に堪えられなくなって来た。
そこで伝さんは、とうとう思い切って、例の奇妙な「案内人」にわたり[#「わたり」に傍点]をつけ
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