によって覆われてしまった……が、間もなく、かすかに希望が浮ぶ。そして追々に明るく、強く、自信に満ちて……
「判りましたか?」
司法主任が云った。
「判りました」
「犯人は誰です?」
「犯人は……」
云いかけて東屋氏は、
「一寸待って下さい」
と今後は私の肩を叩いて笑いながら、
「君は、判ったかい?」
「うん、いまその、計算中だよ」
私は周章《あわ》てて答えた。すると東屋氏は再び微笑しながら、
「おい先生、僕は君に挑戦するぜ。ひとつ、犯人は誰だか、当ててくれ給え。もう君は、この事件の関係者の中で、誰の体重がどれだけあるか? そしてどうすれば犯人の体重が判るか? いやそれだけではない、少くとも犯人を自分で推定することの出来るだけの、凡ての必要な材料《データ》を心得ている筈だ。さあ、見事に当ててくれ給え」
東屋氏はそう云って、私のためにノートを拾いあげてくれた。
「判っていられたなら、さっさと云って下さい」
司法主任だ。
「一寸待って下さい」
と今度は私が遮った。――こうなったら意地でも計算しなければならん。間違わぬように……
――先ず、問題の一九〇・九二〇|瓩《キロ》から、
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