に先発の警官達が着いたと見えて、崖道を登り詰めると、顔馴染の司法主任が主館《おもや》の方から笑いながらやって来た。
「やあ、先生。殺人事件だと云うのに、ヨット遊びとは驚きましたなあ」
そこで私は、東屋氏による事件探査の異常な発展振りを、簡単にかいつまんで説明した。すると司法主任は、
「先手を打たれたわけですな。いや、結構です。じゃあひとつ、その秤の実験に立会わして下さい」
そこで私達は、早速|別館《はなれ》の物置へやって来た。
もういまここで、犯人が判るのかと思うと、私は内心少からず固くなった。が、東屋氏は頗《すこぶ》る冷淡で、さっさと私に手伝わすと、二つの荷物を秤台の上へ乗っけてしまった。
計量針が、ピ、ピ、ピッと大きく揺れはじめる。そして見る見るその振幅が小さくなって、神経質に震えながら――チッと止まる。
七一・四八〇|瓩《キロ》!
瞬間、東屋氏は眼をつぶって暗算を始める。と、急に、どうしたことか、手に持っていたノートを、ばったり床の上に落してしまった。
彼の眼には、顔には、見る見る驚きの色が漲《みなぎ》り始める。そしてその驚きの色は、直ぐに深刻な、痛々しい、困惑の影
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