船体《ハル》の周囲、舷側全体に亘って同じ高さを持っているのです。つまり泡の吃水線は船首《プラウ》も船尾《スターン》もどの部分も一様に水平であって、少しの高低もないのです。――で、私の考えとしましては、只今被仰ったローリングの作用には、原則として必ず中心となる軸、と云いますか、まあこの場合白鮫号の船首《プラウ》と船尾《スターン》を結ぶ線、首尾線とか竜骨線とか云う奴ですね、とにかくその軸がある筈です。でもし、貴方の被仰《おっしゃ》ったように、あの泡の吃水線が積載された一九〇|瓩《キロ》強の重量の抵抗によって出来たものではなく、ローリングによって標準吃水線以上の位置に出来たものであるとすれば、そのローリングの軸である船首《プラウ》と船尾《スターン》の吃水線は、左右の舷側の吃水線に較べて、必ず低くなければならない筈です。逆に云えば、両舷側の泡の吃水線は、軸の両端の船首《プラウ》と船尾《スターン》を遠去かるに従って高くなる訳です。ところが、再三申上げた通り、白鮫号の吃水線はどの部分にも高低がなく、一様に水平を保って着いているのです。なんでしたなら、これからひとつ実地検分を願っても好いです。で、こ
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