の悲鳴があがった。泣き出しそうなおろおろ声も混った。が、女達の後ろから同じように惨劇を目撃していた三人組の客達は、流石《さすが》男だけに、すぐに馳けだしてものも云わずにドタドタと階段を馳けおりると、階下で遊んでいた客や女に、
「大変だ!」
「人殺しだ!」
 と叫びながら表に飛び出して行った。そのうちの一人は交番へ飛んでいった。あとの二人がすっかり酔もさめはててうろうろしていると、その時、煙草屋の店の中からバタバタ音がして、激しくぶつかるようにゴジゴジと慌しく戸をあけて、桃色のタオルの寝巻を着た娘の君子が飛び出して来た。そしてもう表に飛び出してうろうろしていた男や女を見ると、誰彼のみさかいもなく、
「澄ちゃんが、誰かに殺されてるよウ!」
 泣声で、喚きたてた。
 間もなく警官達がやって来た。
 殺されていたのは、やっぱり澄子だった。電気の破《わ》れ消えた真ッ暗な部屋の中に、さっき「青蘭」の女達の見たときのままの、派手な臙脂《えんじ》の井桁模様の着物を着て、裾を乱して仰向きにぶっ倒れていた。最初、懐中電燈を持って飛び込んで来た警官の一人は、倒れた澄子の咽喉《のど》がヒューヒューと低く鳴って
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