銀座幽霊
大阪圭吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)青蘭《せいらん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)みち幅三|間《げん》とない

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)幽霊の殺人※[#感嘆符疑問符、1−8−78]……
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          一

 みち幅三|間《げん》とない横町の両側には、いろとりどりの店々が虹のように軒をつらねて、銀座裏の明るい一団を形づくっていた。青いネオンで「カフェ・青蘭《せいらん》」と書かれた、裏露路にしてはかなり大きなその店の前には、恒川《つねかわ》と呼ぶ小綺麗な煙草店があった。二階建で間口二|間《けん》足らずの、細々《こまごま》と美しく飾りたてた明るい店で、まるで周囲の店々から零《こぼ》れおちるジャズの音を掻きあつめるように、わけもなくその横町の客を一手に吸いよせて、ぬくぬくと繁昌していた。
 その店の主人というのは、もう四十をとっくに越したらしい女で、恒川|房枝《ふさえ》――女文字で、そんな標札がか
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