すよ。あの部屋の中の普通の電燈が消えたからこそ、一層私の意見が正しく現れたんです」
「じゃア、青い電燈が、その時いつの間についたんかね?」
「え? そいつア始めっからついてたですよ。その時にパッとついたんでしたなら、誰にだって気がつきますよ。つまり、その時に青い電燈が始めてついたんではなくて、向うの部屋の普通の電燈が消えた時に、始めていままでついていた青い電燈が、ハッキリ働きかけたんです。だから、この窓にいた人たちは、少しも気づかなかったんですよ」
「いったいその、青い電燈はどこについてたんです」
「いやもう、皆さんご承知の筈じゃアありませんか!」
 警部はこの時、ハッとなると、支配人《バー・テン》の言葉を皆まで聞かずに窓際へかけよった。そして窓枠へ手を掛け足を乗せると、外へ落ちてしまいそうに身を乗り出して、上の方を振仰いだが、直ぐに、「ウム、成るほど!」と叫んだ。
「青蘭」のその窓の上には、大きく「カフェ・青蘭」と書かれた青いネオン・サインが、鮮かに輝いているのだった。
「しかし、それにしても、よくまアこんな事に気がついたね?」
 あとでビールを奢《おご》りながら、警部は支配人《バー
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