まうことがよくありますね。びっくりして手探りで探してみると、チャーンとその何にも見えないとこで手答えがあったりして……ええ、あれと同じですよ。ところが、今度はその赤いガラスの代りに、青いガラスを通して赤インキの文字を見ると、前とは逆に、黒く、ハッキリと見えましょう?……」
「ふム成る程」警部が云った。「君の云うことは、判るような、気がする、がしかし……」
「なんでもないですよ」と西村|支配人《バー・テン》は笑いながら続けた。「じゃ、今度は、その赤インキの文字を、紅色の、臙脂《えんじ》色の、派手な井桁模様の着物と置き換えてみましょう。すると、普通の光線の下では、それは臙脂の井桁模様に見えましょう? ところが、いまの赤インキの文字の例と同じように、一旦青い光線を受けると、その臙脂の井桁模様は暗黒い井桁模様になってしまいます。黒い井桁模様になっただけならいいんですが、その井桁模様の染め出された地の色が黒では、黒と黒のかち[#「かち」に傍点]合いで模様もへちま[#「へちま」に傍点]もなくなってしまい、黒い無地の着物とより他に見えようがありません」
「しかし君。電燈は消えたんだぜ」
「ええそうで
前へ
次へ
全29ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大阪 圭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング