ている時に出て行きました……でも、裏口はあけてありますので、途中で一度帰って来たかも知れませんが、私は眠っていたので少しも知りませんでした」
「いったい何処《どこ》へ、飲みに行くのかね?」
「知りません」
そこで係官は、直ぐに部下を走らせて、達次郎の捜査を命じた。そして引続いて、「青蘭」の女給達と、例の三人組が、証人として訊問を受けることになった。
証人達は、いちばん始めに申立てた事をもう一度繰返した。しかしむろんそれ以外に、なにも新しい証言は出来なかった。ただ、君子の申立が、自分達の見ていたところと一致していることと、それから達次郎のことに関して、女給達が、君子の知っていた程度のことを申立てただけだった。
そこで訊問が一通り済むと、大体房枝の殺された時刻が判って来た。つまり、「青蘭」の女給達に見られて、澄子と対座していた房枝が、荒々しく窓の硝子《ガラス》戸を締めた、あの時から、十一時頃までの間に殺された事になる。そうすると、君子の証言が正しい限り、その間達次郎は家にいなかったではないか? しかし、君子が店番をしている間に、そっと裏口から忍び込んで二階に上り、房枝を絞殺して再び逃
前へ
次へ
全29ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大阪 圭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング