どと云うことは、仲々出来ないと云う理由で、他殺説を主張した。判検事も、警官も、大体その意見に賛成した。そして階下《した》の店の間を陣取って、いよいよ正式の訊問が始まった。
まず、娘の君子が呼び出された。母親を失った少女は、すっかりとり乱して、しゃくりあげながら次のような陳述をした。
その晩、母の房枝は、君子に店番を命ずると、澄子を連れて表二階へあがって行った。それが十時頃だった。君子は、その時の母の様子がひどく不機嫌なのを知ったが、よくある事で大して気にもとめず、雑誌なぞ読みながら店番をしていたが、十一時になると、学校へ行くので朝早いためすっかり睡《ねむ》くなってしまい、そのままいつものように店をしまって裏二階の自分の部屋へ引きとり、睡ってしまった。二階の階段を登った時には、表の部屋からは話声は聞えなかった。が、君子にとっては、それは疑いを抱かせるよりも、妙に恥かしいような遠慮を覚えさしたと云うのだった。ところが、しばらくうとうととしたと思うころ、表の部屋のほうで、例の悲鳴と人の倒れる音を聞いて眼を醒《さま》し、しばらく寝床の中でなんだろうと考え考え迷っていたが、急に不安を覚えだす
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