』ってのも、それから大勢の証人達が見たと云う剃刀を振廻していたその『房枝』ってのも、それは本物ではなく、もうその時にはとっくに死んでいた房枝……飛んでもない……房枝の幽霊ってことになりますよ。幽霊の殺人※[#感嘆符疑問符、1−8−78]……それも銀座の、ジャズの街の真ン中で、幽霊が出たんだから、こいつア新聞屋にゃア大受けだがね……」
二
事件は、俄然紛糾しはじめた。警官達は大きな壁にでもぶつかった思いで、ハタと行き詰ってしまった。しかも、問題が二つに分れて来た。死人が二人になった。そのうちの一人は、幽霊に殺され、他の一人は、死んでから、幽霊になってふらふらと人を殺しに出掛けたことになる。なんという奇怪な話だろう。
しかし、このまま踏みとどまっていることは出来ない。警官達は直ぐに気をとりなおして、再び調査にとりかかった。
まず、あとから殺された澄子のほうは、ひとまず後廻しにして、とりあえず房枝の死について調べ始めた。
――いったい房枝は、自殺したのか? それとも他殺か?
けれどもこの疑問に対しては、警察医は、縊死とは違って、自分から手拭で首を締めて死ぬな
前へ
次へ
全29ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大阪 圭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング