くら戻っても、いくら見廻しても、しかし疑問のスキーの跡は、みつからない。こいつは妙だぞ、私は益々うろたえはじめた。
 ところが、空地の入口の近くまで来て、やっと私は、仄白い雪の肌に、さっきのスキーの跡を再びみつけることが出来た。私はホッとして、今度こそは見失わぬように、ずっとその跡の近くまで寄添って、糸でも手繰《たぐ》るようにしながら進みはじめた。こうしてつけて行くと、やっぱりその跡は、原ッぱを斜めに横切って、本通りのほうへ向っている。なんだってこいつを見失ったりしたのだろう。私は、再三自分で自分をどやしつけながら、注意深く跡を見詰めつづけて行った。ところが、そうして今度こそはと注意して進むうちに、とうとう私は、まことになんとも変テコなことに気がついてしまった。
 というのは、原ッぱの真ン中近くまで来ると、どうしたことかその疑問のスキーの跡は、ひどく薄くなって、いや元々古い雪の上に積った新しい雪の上のその跡は、決して深くはなかったのだが、それよりも又浅くなって、なんと云うことだろう、進むにつれ、歩むにつれ、益々浅く薄く、驚く私を尻目にかけて、とうとう空地の真中頃まで来ると、まるでその上
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