疑問のスキーは、やがて裏通りを右手に折れて、広い雪の原へはいって行った。その空地の向うには、三四郎の家の前を通って市内へ通じている本通りがある。スキーの跡は市内の方へ向いてその空地を斜めに横切り、どうやら向うの本通りへ乗り換えるつもりらしい。この分では、途中で警官に応援を求めることが出来るかも知れない。私は急に元気づいて、かなり広いその原ッぱを、向うの通りへ斜めに向って走って行った。しかしその私の考えは、まるでトテツもない結果に終ってしまった。
 最初私が、スキーの跡は本通りへ乗換えていると思い込んだのが、そもそもよくなかった。はじめそのつもりで斜めに雪の原を横切って行った私は、もうその原ッぱを半分以上も通り越したところで、ふと、いつの間にか疑問のスキーの跡を見失っていることに気がついた。びっくりした私は、あわててあたりを見廻した。が、雪の肌にはなんにもない。ただ私の通って来た跡だけが、少しずつ曲りくねりながら至極のんびりと残っているだけだ。
 私は、自分で自分をどやしつけながら、あわてて廻れ右をした。あたりをせわしく見廻しながら、元の空地のはいり口へ向って、後もどりをはじめた。い
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