ィギュアーと言うか、つまりステップの型だね。それは非常に強調な、人を激励する様な、ワンステップ風のものなんだ。――ところで、これを君は、何だと思う」
 大月はそう言って、一枚の紙片を秋田の前に拡げて見せた。秋田は、それを一寸見ていたが、直ぐに、幾分得意然として、
「――判ります、つまりこれが、そのマーチ・フォックストロットのステップの跡、と言うか、足取りの跡を、先生が図にしたものなんでしょう」
 すると大月は笑いながら、
「――ウッフッフッフッフッフッ……まあ、そうも言える。が、そうも言えない」
「と言うと――」
 秋田は思わず急き込んで訊ねた。
「つまり、スパニッシュ・ワンステップの足取りであると同時にだね。いいかい。もうひとつ別の……何かなんだよ」
「別の――※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
「他でもない。屏風浦の断崖の上の、あの素晴しい格闘の足跡なんだ!」
 ――秋田は、蒼くなって了った。

     四

 自分の鋭い不意打の決断に、すっかり魂消《たまげ》て了った秋田の顔を見ながら、ニコニコ微笑していた大月は、軈て、煙草の煙を環に吹きながらポツリポツリと言葉を続けた。
「―
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