ったのでしょう、宿直当番になった被害者は、就寝前の十時頃、バルーンの様子を見るために屋上へ登ったのです。其処で彼は、穴の明いたバルーンが、浮力の減少したためにフニャフニャと降りて来そうなのを発見して非常に驚き、急いで力任せにロープを手繰《たぐ》りバルーンを降し始めました。浮力が減少したとは言え、瓦斯《ガス》が充満してさえいれば600瓩《キロ》の浮力を持つバルーンです。被害者は掌中に幾つもの胼胝《たこ》を作りながら、夢中でバルーンを降してしまいました。そして、瓦斯注入口《ガスゲート》の弁を開き、多分一度は隠した品物の安全を確かめたでしょう、勿論まだ事件のほとぼりが冷め切っていないために、品物を持ち出す危険は避けたのでしょう。それから瓦斯《ガス》のホースをあてがい、水素|瓦斯《ガス》の補充を始めます。瓦斯《ガス》が充満するに従って、バルーンの浮力は増大します。この場合、被害者は重大な過失を犯しています。即ち、最初バルーンを降す時に驚きの余り急いだため捲取機《ローラー》を使用せずに直接手で手繰《たぐ》り降してしまった事です。この推定に対しての反証は、今朝急いでグローブなしでハンドルを掴んだこ
前へ 次へ
全25ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大阪 圭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング