デパートの絞刑吏《こうけいり》
大阪圭吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)青山喬介《あおやまきょうすけ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)多分|独逸《ドイツ》物

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)キマリ[#「キマリ」に傍点]
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 多分|独逸《ドイツ》物であったと思うが、或る映画の試写会で、青山喬介《あおやまきょうすけ》――と知り合いになってから、二カ月程後の事である。
 早朝五時半。社からの電話を受けた私は、喬介と一緒にRデパートヘ、その朝早く起こった飛降り自殺のニュースを取るために、フルスピードでタクシーを飛ばしていた。
 喬介は私よりも三年も先輩で、かつては某映画会社の異彩ある監督として特異な地位を占めてはいたが、日本のファンの一般的な趣向と会社の営利主義《コムマアシャリズム》とに迎合する事が出来ず、映画界を隠退して、一個の自由研究家として静かな生活を送っていた。勤勉で粘強な彼は、一面に於て、メスの如く鋭敏な感受性と豊富な想像力を以てしばしば私を驚かした。とは言え彼は又あらゆる科学の分野
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